バッファローの新キーボードの凄さ

 昨年より周辺機器に参入したバッファロー(旧・メルコ)が、周辺機器に128種もの新製品を追加投入するという。いわゆる小物が多いため“128種類”という数字ほどのインパクトはないのだが、実はよく見ていくと、凄い点がいくつかある。 
 まず一つは、その投入理由。PC Watchの大河原克行氏レポートに詳しいが、従来の約100製品では棚を占拠できないから――という理由なのが恐ろしいところ。アキバのショップにおけるメーカー間の力関係と大型量販店でのそれは、同じものを販売しているにもかかわらずかなり異なった次元にある、と思わせる。

 さて、もう一つ凄い、と思ったのが、実際の製品。具体的には、キーボードだ。以前の同社製キーボードは無難なラインナップだったが、今回はなにをとち狂ったか(失礼)、一般ユーザーが必要としないような、超高級製品を投入しているからだ。


 具体的には、PC Watchの製品紹介ページの2機種目のタッチパッド付きキーボード「BKBU-TPJ92/BK」と、3機種目のメカニカルキー搭載製品「BKBC-MJ109」である。

 BKBU-TPJ92/BKは、テンキーレスタイプのキーボードの右側にタッチパッドを搭載する……という、これまでには例のない構造の製品だ(少なくとも日本の個人向け製品では見たことがない)。そして驚くのは、その価格。1万4007円という価格は、キーボードとしては超高級製品だろう。東プレのRealForceシリーズなど、「2万円近い製品でも売れるものは売れる」というのがキーボード市場だが、一般コンシューマ用に特化していた最近のバッファローの路線からすると、非常にマニアックな製品と言えるのではないだろうか。
 そして、驚くと同時に、納得したのが、BKBC-MJ109だ。というのも、これは一般ユーザーが初めて見るメカニカル式キーボードになる可能性が高い。と同時に、将来のバッファロー製キーボードのファン層を増やしてくれるであろう製品になる可能性も高いからだ。

 秋葉原を見ていると、独特のユーザー層から確実に支持されるメカニカルキーボードは、かなりの売れ筋になっている。そのため想像ができないが、そもそも地方の場合、よほどの大型店でないと、メカ式キーボードなどは見ない。
 ある程度販売力のあるメーカーとしては、ダイアテック(FILCOブランド)が孤軍奮闘でメカキー搭載製品を発売しているが、地方の中小ショップでは販売していないところも多い。これは私の予想だが、中小店舗では、商売上のリスクを考えると、大手周辺機器メーカーの製品だけしか入れられないのであろう。
 さて、現在単体キーボード市場で大手メーカーと言える存在は、マイクロソフトロジクールしか存在しない。そして、これらのメーカーはメカニカルキーの製品をラインナップしていない。こうした構造により、極論してしまえば、地方などでは「普通のユーザーはメカ式キーボードを見ることができない」……という構図となっていた。

 そうした市場動向を破壊する可能性を持つ存在こそが、BKBC-MJ109だ。「強力な販売力を持った大手周辺機器メーカーが、初めて投入するメカ式キーボード」だからである。地方の中小ショップなどでは、同機がはじめて入荷するメカ式キーボードになるかもしれない。
 そして、メカ式キーボードは、感覚が合致するユーザーにとっては麻薬的な味わいのあるものだ。一度とりこになったユーザーは、メカ式キーボードから離れにくくなる。
 そういった意味でこの製品は、キーボードを重要視するユーザー(とくにメカ式キーのファン)にとっては、これまで限られていた市場を広げてくれるという意味あいを持つ、非常に重要な製品と言えるのではないだろうか。
 また、バッファローにとっては、その一部でも“バッファローキーボードのファン”になってくれれば、非常にありがたいのではないか、と思う。

 さて最後に、私がバッファローに期待したいことを、勝手に述べて締めよう。それは、東プレの「静電容量無接点方式キー」を採用した製品の投入だ。RealForceOEMでもいいだろうし、オリジナルの製品を投入してくれれば、なおいい。
 なぜこうしたことを書くかという理由は2点。まず1点目は、静電容量無接点方式キーボードの市場の拡大だ。これはBKBC-MJ109の場合と同じで、地方のショップでも扱ってもらえる可能性があるからだ。
 そしてもう1点は、価格の問題。大手周辺機器メーカーの販売力を活かして、安価に販売できる可能性があるからだ。たとえば、「BKBC-MJ109」の価格は6,993円。これだけ見ればメカ式キーボードの水準だが、しかしこれは定価。実際に販売が開始されてみなくてはわからないが、従来のバッファロー製キーボードの実売価格からすると、おそらく5000円台での販売となると予測できる。最安価というわけではないが、メカ式キーボードの新製品としてはかなり安い。
 こうした図式が、少しでも静電容量無接点方式キー製品に適用できれば……と思うのだ。

 おそらくバッファローとしても、BKBU-TPJ92/BKという超高級製品を投入している点で、こうしたマインドシェア重視戦略はすでに考えている可能性が高い。既に話が進んでいるとしても、驚きはしないだろう。

#私の本音は、静電容量無接点方式キーボードが少しでも安価になるのを望んでいるだけなのだが(笑)。